prose-小話なわばり
2013年11月27日 趣味 川畔にふたつのこんもりした林があって柳や落葉になる潅木が蔦などの蔓植物にからまれて繁っていた。ふたつの林はおよそ半里ほど離れていてそれぞれの中心にたくましく育った野グルミの樹を空につきだしていた。ときどき白鷺のコロニーの様相をていしていたが、秋深なってクルミが熟すこの期はハシブトカラスが上空を舞いはじめ日を数えるうちすっかりハシブトカラスの巣になってしまった。
よくみていると、住民が驚くほど群れ集まり空の一画がまっくろになるほどに乱れ交い喧しい不気味な鳴声を不文律に放つのであるが、ふたつの巣には仲間からぬきんでいる体格の頭分がいて、東の方は仮にカン太郎かたや西はカン三郎と呼ばれているようだった。
河川敷に繁茂したアシやガマの茎のあいだを野ネズミやカエルの小動物が跳躍して日のひかりを浴びたりすると、すかさず降下して捕食を逸しない貪欲強欲さをもちあわしている。だいたいハシブトカラスは雑食性でうごくものならなんでも襲いかかるし夏の暑い日にはうねいて抵抗するアオダイショウを銜えてとびたつときだってある。自分だけが捕食するわけでなく黒く大きな翼を草の葉すれすれに飛んではばたき、先物の小動物だけじゃなくバッタ類もおいたてて仲間の糧も確保する度量の大きさを持ち合わして頭分の地位をかためていた。
ふたつの勢力にはそれなりの縄張りをもっていて、面積の広さはもちろん湿地が適当にあって小動物の塒づくりができる草丈の堤をかかえた良好な領分であれば申し分ない、合して群れの仲間の面倒がいい頭分がいればいきおい隆盛になる。
最近カン太郎の仲間がにわかに膨張してきたのにはそのような主たる要因があった。勢力を維持するためには美味しくて枯渇の心配にない餌食の支配域をつねに翼下においておかねばならない、して仲間から配下への格付けした烏合の衆を養うために版図拡大をはかることにかりたてられカン太郎はまづ手始めに竜之口山に陣取る幾派の群れに攻撃をしかけて制覇し縄張りをひろげていった。そのなかにはカン太郎集団とは毛色のちがう群れもあったが強引に圧倒的な力でねじふせてきたのである。
カン太郎はじめ幹部は飽食の栄養ゆきわたり自慢の羽や胸毛は漆黒の艶ますます映え堂々たる体躯になった、かたや部下の有様といえば貧に貪きわまり羽色鈍く痩せてきていた。ぶうぶう、不平不満の声があがり、さてはあちこちで暴動が頻発してきたのには幹部連中は鍋の蓋をして抑圧をした、しかし抑えれば抑えるほどに沸騰する不満はふきあがり幹部は危機感で顔色がなくなった。そこで使いふるした戦略を埃をはらって図った、いわく隣地のカン三郎エリアの飛地に斥侯のゲリラを放ち、はては「ここはおれんちの先祖が羽を休めていたところ、だから古来からおれんちの領地だ」と主張しはじめ、
「カン三郎集団が無謀に侵略してきたぞ」
などと内外にのろしをあげたのである。
なるほど不平不満がたまっていなないている馬の鼻づらににんじんをぶらさげられようなもの、上から抑えられた烏合のむかうところのエネルギーは、
「しゃらくせえ、カン三郎集団をやっけろ」
よこしまな操縦で関心は安全弁の噴出口にながれたのである。
いつしかなわばり争いは物質的な侵略にとどまらづ、いまや精神的な敵愾に養成されていつ果てることなし続いている。
よくみていると、住民が驚くほど群れ集まり空の一画がまっくろになるほどに乱れ交い喧しい不気味な鳴声を不文律に放つのであるが、ふたつの巣には仲間からぬきんでいる体格の頭分がいて、東の方は仮にカン太郎かたや西はカン三郎と呼ばれているようだった。
河川敷に繁茂したアシやガマの茎のあいだを野ネズミやカエルの小動物が跳躍して日のひかりを浴びたりすると、すかさず降下して捕食を逸しない貪欲強欲さをもちあわしている。だいたいハシブトカラスは雑食性でうごくものならなんでも襲いかかるし夏の暑い日にはうねいて抵抗するアオダイショウを銜えてとびたつときだってある。自分だけが捕食するわけでなく黒く大きな翼を草の葉すれすれに飛んではばたき、先物の小動物だけじゃなくバッタ類もおいたてて仲間の糧も確保する度量の大きさを持ち合わして頭分の地位をかためていた。
ふたつの勢力にはそれなりの縄張りをもっていて、面積の広さはもちろん湿地が適当にあって小動物の塒づくりができる草丈の堤をかかえた良好な領分であれば申し分ない、合して群れの仲間の面倒がいい頭分がいればいきおい隆盛になる。
最近カン太郎の仲間がにわかに膨張してきたのにはそのような主たる要因があった。勢力を維持するためには美味しくて枯渇の心配にない餌食の支配域をつねに翼下においておかねばならない、して仲間から配下への格付けした烏合の衆を養うために版図拡大をはかることにかりたてられカン太郎はまづ手始めに竜之口山に陣取る幾派の群れに攻撃をしかけて制覇し縄張りをひろげていった。そのなかにはカン太郎集団とは毛色のちがう群れもあったが強引に圧倒的な力でねじふせてきたのである。
カン太郎はじめ幹部は飽食の栄養ゆきわたり自慢の羽や胸毛は漆黒の艶ますます映え堂々たる体躯になった、かたや部下の有様といえば貧に貪きわまり羽色鈍く痩せてきていた。ぶうぶう、不平不満の声があがり、さてはあちこちで暴動が頻発してきたのには幹部連中は鍋の蓋をして抑圧をした、しかし抑えれば抑えるほどに沸騰する不満はふきあがり幹部は危機感で顔色がなくなった。そこで使いふるした戦略を埃をはらって図った、いわく隣地のカン三郎エリアの飛地に斥侯のゲリラを放ち、はては「ここはおれんちの先祖が羽を休めていたところ、だから古来からおれんちの領地だ」と主張しはじめ、
「カン三郎集団が無謀に侵略してきたぞ」
などと内外にのろしをあげたのである。
なるほど不平不満がたまっていなないている馬の鼻づらににんじんをぶらさげられようなもの、上から抑えられた烏合のむかうところのエネルギーは、
「しゃらくせえ、カン三郎集団をやっけろ」
よこしまな操縦で関心は安全弁の噴出口にながれたのである。
いつしかなわばり争いは物質的な侵略にとどまらづ、いまや精神的な敵愾に養成されていつ果てることなし続いている。
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