prose-古寺紅葉

2013年11月7日 趣味
 紅葉前線の南下がつたえられるが今眺める視野内の色はまばら、まだまだ山は緑の衣を纏っている。宝福禅寺の境内も紅い分には鮮やかに映えてはいるものの、おおかたは緑の衣が捨てがたく袂をかかえている境内の風情である。
 山門をくぐる前から大杉に護衛されているように黒々と建つ本堂が直線上にあり威容をほこっている。
 ひとわたり此処を巡り自我独尊の判断でポイントに思うところでシャッターをきる、本堂裏の楓一木が真紅に染まっていた。
 どういうわけか方丈前の雪舟さんはつむりの剃り跡の青青さを思わせるようないたいげな小僧姿、大人びた青年のなかに思春期の憂いを秘めた姿は山門ひだりにある坐像、いわれどおり後手にしばられ膝元の鼠と戯れていて二対そろい寺の風雅に趣をそえていた。紅葉一枝なりとも垂れていれば申し分ないのだが無となればすればそれも可となし、清廉さっぱりしている坐像である。
 鎌倉時代まえは天台宗のお寺で創立のちに臨斉宗に改宗、東福寺派中本山の格で西日本いちめんの臨斉宗布教活動拠点であったといわれている。
 本堂天井の龍の絵は、江戸時代のものといわれ幾年風月をかさねてか絵の具の劣化がいちじるしくそのぶん古刹を偲ばせていた。
  
 現役のころ、といっても大阪本社から転勤で岡山工場に赴任したときにこの寺でおこなわれる暁天座禅に2度参加したことがある。詳細は記憶のかなたへとんでいて思い出せないが、本尊のまえで集団就寝し朝あけやらぬまに起床、みずくろいして靄のおりたつ縁にて座禅を組んだ覚えがあるが、無我の境地とはほど遠いものだった。食事や雑巾かけをして解散し境内を歩むさい、朱の三重塔と見事に紅葉した木々の見送りをうけた覚えがある。
 

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