prose-がいせん桜

　日露戦争勝利を祝って明治３９年に植樹された染井吉野の桜１３７本。老木に鞭打ち包帯だらけになりながら残った３３本に見事な花を咲かせた。
　凱旋桜を観にいくという友人に誘われて乗席させてもらい鳥取県境の新庄村にでかけた。
　桜見物だけにしぼって当地に出向いたのは何十年ぶり、肩の擦れ合う街道をそぞろ歩きしてみて、より感慨わくのは出雲街道、宿場町新庄の風情である。
　私にとっては桜は二の次だ。
　四十曲峠を越えての参勤交代の風、その昔は後醍醐天皇の隠岐流浪の道であって歴史と国を司った秘めやかさを偲ぶと宿泊しての思い耽けたくなる。