陽射しはあたたかいが気温のあがらない日々がつづく。
 サンルームでだべっていると居眠りがつくほど気持ちいい。
 極楽気分を味わうのは風が入らない車内でも同じことと考え、エンジンを動かして遠出のドライブすることにした。
 芽吹きの色が少しのったかなあと思いながら山々稜線を後方へとばして爽快、音を出さない口笛でリズムをとりながら高速道を落合JCで下り181号線の勝山は文化センターの駐車場に停めた。
 2万3千石の城下町は旧家が町並み保存で趣がのこり白壁が旭川渓流にとけこんだ民俗歴史文化が根づき、かっての高瀬船の発着場、木材の集積セリ市、出雲街道宿場町のにぎわった装いを色濃く漂わしている。高田硯が名産、戦時中に疎開していた谷崎潤一郎も愛用していたという逸話から河鹿や蛍の情緒がわいてきて、夕暮れの窓灯かりに文人が潜んでいるようなムードになる。湯上りのほてりを2階の出窓にあずけて寛ぎ書き散らかした炬燵のうえで地酒をふくみ、かててくわえて三味をはべらせば寿命が相当延びるような気がしないでもない、といったら潤一郎より夢二の境地に似ているかもしれないが。
 3月3日の雛祭りは大賑わいで大型バスの観光客で町の人口が一挙にふくれあがる。どっしりと構えた商家の通りを愛犬を抱いてだらだらと歩く。雛祭りの準備で店内は声が飛び交う。
 どの軒下にも孟宗竹の節上を楔形に切った空間に小形の雛を載せている。竹の青色がまことに結構だ。祭りの脇役を十分にはたしている。
 祭り本番もいいがこうやって静かに進行している蠢きに触れるのは楽しくてしょうがない。
 陽が稜線にかくれ俄かな日暮れに追われて文化センターに帰りついた。
 四方の山が黒墨法師になっておそいかかってくるようだった。
 

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