prose-平々凡々のもんだ
2012年8月14日 趣味 恒例の墓参に帰郷する。
いつもは岡山ICからだが今回は山陽ICを利用した。市内の信号渋滞を回避したつもりなのに思わぬことになった。
走り出だしは順調にいったものの旭川にかかるころ下り車線は混みだし低速道になり、笠井山トンネルのなかではついに停止してしまった。
わき道に逸れるわけにもいかない高速道の盲点に遭遇、万事休す。
高所恐怖症と閉所恐怖症を少しづつ併せもつ身は実におだやかでない。
にじるように進んでやっと平常に戻り岡山ICを通過、なにが原因の渋滞かわからずじまい、総社から岡山道に入りいたって高速通行に安堵、この先の有漢と北房間の袋を絞ったような片側一車線での渋滞区間をおもいやったがこれはスムーズに通過することができた。
帰りは高速道は「やんぺ」と宣言したもんだ。
小高い丘にある墓地には墓石が累々と並びそれぞれの供える線香の煙が薄紫色をながしている。甥っ子がきれいにしていたので花えを活け水と菓子類を供え合掌、父母、長兄夫婦、先祖の霊、水子供養を終える。
高い木の上には烏群団が今か今かと待機していた。
中世時代、守護職赤松の勢力が及んでいた盆地は陽の光輪の中でたゆとうていた。
真向かいにどっしり腰を据えた飯の山には菩提寺の大屋根が見える。
小学校のころ、寺の修理に狩り出されて親戚のおっさんとペアになって基礎塗りをやったことを思い出した。
金属製の大きな入れ物(正式名を忘れた)に砂とセメントをいれ水を注ぎこみ鋤簾でこねるのである。いわれるがまま適当にやっていると縁側に座っている和尚が、
「もうちょっと腰をいれてやらんかい」と叱咤する。
(てやんだえ)のが口には出せないので腹のなかで口答えする。田の稲株をおこすのとは勝手が違うので何回もやるとへとへとになり、あかね雲をみるころにはダウン寸前だった。「ようやった」、おっさんと和尚は口をそろえて褒めてくれた。縁側に招いてくれ、
「まあ、飲めや」と苦くて美味しくもないお茶を勧められ、茶菓子に生乾きの吊るし柿を添えてくれた。まてよ、さっきまで和尚は黒ずんだ皺皺の柿を平ったく伸ばしていて合間にぺっぺっと指につばしていたではないか、しかも胡坐をかいた着物の裾がわれてふんどしの脇から吊るし柿そっくりのものがはみ出ているのである。
さすが、おっさんはむしゃくしゃ舌をならして咀嚼している。
「さあ食え、うめえから食え」と和尚がうるさい。
(おれは食わねえ、死んでも食わねえ)と思ったもんだ。
故郷はいい、なんでも思い出すもんだ。
いつもは岡山ICからだが今回は山陽ICを利用した。市内の信号渋滞を回避したつもりなのに思わぬことになった。
走り出だしは順調にいったものの旭川にかかるころ下り車線は混みだし低速道になり、笠井山トンネルのなかではついに停止してしまった。
わき道に逸れるわけにもいかない高速道の盲点に遭遇、万事休す。
高所恐怖症と閉所恐怖症を少しづつ併せもつ身は実におだやかでない。
にじるように進んでやっと平常に戻り岡山ICを通過、なにが原因の渋滞かわからずじまい、総社から岡山道に入りいたって高速通行に安堵、この先の有漢と北房間の袋を絞ったような片側一車線での渋滞区間をおもいやったがこれはスムーズに通過することができた。
帰りは高速道は「やんぺ」と宣言したもんだ。
小高い丘にある墓地には墓石が累々と並びそれぞれの供える線香の煙が薄紫色をながしている。甥っ子がきれいにしていたので花えを活け水と菓子類を供え合掌、父母、長兄夫婦、先祖の霊、水子供養を終える。
高い木の上には烏群団が今か今かと待機していた。
中世時代、守護職赤松の勢力が及んでいた盆地は陽の光輪の中でたゆとうていた。
真向かいにどっしり腰を据えた飯の山には菩提寺の大屋根が見える。
小学校のころ、寺の修理に狩り出されて親戚のおっさんとペアになって基礎塗りをやったことを思い出した。
金属製の大きな入れ物(正式名を忘れた)に砂とセメントをいれ水を注ぎこみ鋤簾でこねるのである。いわれるがまま適当にやっていると縁側に座っている和尚が、
「もうちょっと腰をいれてやらんかい」と叱咤する。
(てやんだえ)のが口には出せないので腹のなかで口答えする。田の稲株をおこすのとは勝手が違うので何回もやるとへとへとになり、あかね雲をみるころにはダウン寸前だった。「ようやった」、おっさんと和尚は口をそろえて褒めてくれた。縁側に招いてくれ、
「まあ、飲めや」と苦くて美味しくもないお茶を勧められ、茶菓子に生乾きの吊るし柿を添えてくれた。まてよ、さっきまで和尚は黒ずんだ皺皺の柿を平ったく伸ばしていて合間にぺっぺっと指につばしていたではないか、しかも胡坐をかいた着物の裾がわれてふんどしの脇から吊るし柿そっくりのものがはみ出ているのである。
さすが、おっさんはむしゃくしゃ舌をならして咀嚼している。
「さあ食え、うめえから食え」と和尚がうるさい。
(おれは食わねえ、死んでも食わねえ)と思ったもんだ。
故郷はいい、なんでも思い出すもんだ。
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