prose-感情移入

2012年2月16日 趣味
「ピク、ともせず我慢してますなあ」
「3~4時間も枯れ葦の先にとまったままじゃが」
「ここら一帯が棲家ですかねえ、一年通じていてますか」
「ああ、おるでえ、ここに棲みついとる。わし、この子(カワセミ・雌)ずっと
 見守ってきてな6年のつきあいになる。この子は人馴れしてからに可愛いや
 つじゃで」
「へえ、6年もねえ」
「カワセミの寿命は4年じゃけえこの子はおおばば、それでも2匹子を産ん
 で育てたからのう、人間ならとっくにひあがっとるのに元気なもんじゃ。せ
 えじゃから大食いで仰山食べる」
「あっ、跳んだ!」
 まじかの水面に飛沫がたち瞬きすればこそ枯れ葦の先に乗り長い嘴に白く光
 る小ハエをくわえていた。
 たよりない枯れ葉にとまってじっとうごかないのは、確実に捉えられる小ハ
 エの影を狙っていたのだ。
 ウオッチャーのカメラも、バシャバシャと小気味いい連写音でホバーリング
 から水面裂いて嘴を入れ獲物をくわえ反転するコマの動態をキッチリとらえ
 ていた。

 「食べたんだから、もう塒へお帰り・・・」
 長いつきあいのあるウオッチャーは老体のカワセミにかたりかけた。
 それでも一体一鳥は河川敷の風景に溶け込んで動かなかった。
 



 

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