日暮れ前 運河の護岸石に座って一息いれていた
 岸近くの淀みにヨシ ガマが無尽に繁り
 泥地がすくないところは 根張りがままならず
 水生植物もまだらになった空白の水面に
 越年のカモが小集団で戯れ
 水紋の輪が元の顔にかえるあたり
 シロサギと青サギが離れて突ったっていた

 脚を杭にし長い首をS字にして
 失念の老師というか
 思索に没念している哲学者というか
 他の出来事一切 われ関せずの風貌
 瓢々の威厳である

 ヨシが茎もろともツーと水中にくもがくれした
 哲学者はさもあらんと見向きもしない
 しばらくして 小紋がたち
 ヨシの茎が
 ふたたびツツーと水中に入った
 水中でだれか引っ張っりこんでいる

 水を引き裂いて巨大なネズミが浮かんだ
 全体がはかれないのでなんともいいがたいが
 50~60cmはあろうか
 淡水の怪獣
 淡水の生きている空母
 褐色の剛毛をかぶり白口ヒゲをZ旗にした
 悪名たかきヌートリアだ

 まじまじ対面するのは初めて
 まさしく怪獣だ 
 ブルルッとふるえた
 3mさきになにより怖い人間がいるとは
 相対者はつゆとも知らず
 メタンが沸く淀水 ヘドロに培養された鼻つまみの悪臭
 ヘともせづに天国にいるような顔をしている 
 
 まるまる肥えた大砲の胴体に奇怪なネズミ顔
 偉そうに白口ヒゲはピンと張り
 黄ばんだ上下4歯は強靭な武威
 いっぱい菌糸に汚れているギロチンだ

 日本古来種ではなく戦時中に移入
 養殖され
 剛毛と柔らかい満毛の二重になった特性が
 凍土の兵士を守った
 肉は食用の膳にのぼった
 食用?・・・
 
 役目を終えた戦後は硝煙処理に遭い
 一部放逐された
 全国で岡山はTopの生息地
 児島一体に野生化し増殖つづけた
 害獣となり水田の堤に穴を開け
 稲苗を食い荒らす
 だから人は執念で追い回し
 ヌートリアは怨念で出没
 で、絶えて絶えていないのである
 
 たちあがるとガバッと潜水した
 サギも
 カモも
 人間も
 脅威を感じて飛翔 滑走 浮き足だった
 
 

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