生活レベルがある程度あがった社会に法令や禁止令が頻発すると閉塞感がうまれ、さらに増税が加われば不安不信が先行する。また標榜する目標が説明がなかったり暗い生活が想像されればパニックが起こる。資質が疑われる宰相なら思いつき発言の頻度が施政方針の朝令暮改のぶれにあらわれ、これが民衆を暗澹とさせることになる。今現代は吉宗が標榜したデフレの形をなしているので明確な指針と有効なみちびきがないと全般が沈滞してくるのがよく分かる。目指す姿はこうだ、そのためにはこういう施策が段階的に必要だという説明布令がないままいきなり家康の質素剛健にたちかえろうとする手段を打ち出したものだから、民衆は承知しない。錆の浮いた昔の文化、生産に貢献しない武士階級の復活を歓迎するはずがなくそれを甘受しない社会に進化しているのを認識しないものだから、もろもろの反抗抵抗が勃発、なかでも尾張徳川宗春が吉宗の向こうを張って豪奢絢爛の所業で金銭を濫費してみせ庶民の羨望と喝采をかい(吉春の場合、単に施政の問題だけではなく将軍継承のトラブルも介在する)、徳川四天王の一つ、榊原政岑(まさみね)姫路藩主も音曲歌舞はじめ贅をつくした振る舞いにあけくれたのは理屈としてありうること。民衆は下駄の裏に金を貼り、木綿の着物の裏地に絹を使うというなどの抵抗で法律将軍の「享保の改革」に反抗した。いわゆる反抗分子に構築された哲学はみられないものの、民衆の欲望を潜在化させた風潮で幕府を骨抜きにする力はあったのである。
 今昔デフレもインフレも極端に針をふると経済は混乱停滞する。改革は宰相の後戻りのない目標の明確なうちだし、懇切丁寧な説明、段階的な施政、そして先明な対応策がうてる一国の宰相出現が待ち望まれる。
 歴史をひもときながら思ったことである。

 
 

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