思い出し笑いの話
2006年12月2日ハンドルを回すままに走り回った過日、真庭市の山中で完全舗装した道路を登った。とにかく走ったことの無いところを選んで走った。
この道がどこを抜けてどこへ行くのか、見当もつかない。綺麗な道だから集落があるには違いない、方角からいえば落合の方向だから旭川河畔のおりるだろうぐらいの、いい加減の思いであった。ところどころに棚田の様子が伺える。フムフム、と人匂いがするのである。
急登でカーブのめったやたらと続くものだから風景にあまり注意がいかないが、昼間から物の怪が棲むあたりではなさそうな。もっとも夜はこうもいかない、雑木林ばかりの山並みばかりで、街灯なぞはもちろんなくて、光るものは多分狐狸の類の眼だけだろうから、コウモリが飛び交い大鷲がバサバサ飛翔するにちがいない。こんなとこ、闇のなかの走行はまっぴらゴメンの世界である。万が一、車がエンコでもしたらどうなるんだろうか、ケイタイの電波も届かないだろう。人なんて昼間でさえ出会わないのに、コリコリ、バタバタの獣や怪鳥の舞踏会のなかに取り囲まれのだから乙に澄ましてワインなどを傾けて微笑むどころではないのだ。・・・想うだに頬が引き攣る。
稜線近くなって道は山にぶつかった。その山を切り通しのようにY字形の岐路が抱えていた。どちらも舗装した同じ幅員なのに、標識もなにもない。
さて、どっちにいくべぇか。停車して思案した。
そこへ幸いなことに、独りの老人がヒョコヒョコ上ってきた。すれ違ったいたはずなのに、覚えが無い。突然現れた。朴訥な老人とみた。
「これ(左)へいったらどこへぬけますか?」
「そっちえいったらおめェ、ノブさんとこでおしめェだあ」
「ああん・・?」
ノブさん、ってそれはなに・・だれ・・。
「そっち(右)は?」
「こっちはおめェ行き止まりだあ」
老人は鳩豆の目をして大真面目である。要はどちらへ行っても立ち往生するのだ。
いやはや、みも知らぬノブさんの庭先で立ち往生するわけにもいくまい。
戻り道、往き際には気がつかなかった路傍に、直立した2mほどの茎にまことに見事な花が咲いているのを発見した。
「ほう!」
この時期に、なんとまあ見事な花なんだろう。
いそいそ降りて近寄った。しかも花冠から花弁まで少しも痛んでない。それどころかツヤツヤして光っている。
「ほほう!」なんの花だろう。
それにしても整いすぎている、ような。
花弁に指で触ってみた。
「ん??」
なんと、プラスチックの花だった。
針金で巻きつけて、丁寧にテープで覆ってあった。
「・・・・・・」
この道は昼間から狐狸がでるようだった。
この道がどこを抜けてどこへ行くのか、見当もつかない。綺麗な道だから集落があるには違いない、方角からいえば落合の方向だから旭川河畔のおりるだろうぐらいの、いい加減の思いであった。ところどころに棚田の様子が伺える。フムフム、と人匂いがするのである。
急登でカーブのめったやたらと続くものだから風景にあまり注意がいかないが、昼間から物の怪が棲むあたりではなさそうな。もっとも夜はこうもいかない、雑木林ばかりの山並みばかりで、街灯なぞはもちろんなくて、光るものは多分狐狸の類の眼だけだろうから、コウモリが飛び交い大鷲がバサバサ飛翔するにちがいない。こんなとこ、闇のなかの走行はまっぴらゴメンの世界である。万が一、車がエンコでもしたらどうなるんだろうか、ケイタイの電波も届かないだろう。人なんて昼間でさえ出会わないのに、コリコリ、バタバタの獣や怪鳥の舞踏会のなかに取り囲まれのだから乙に澄ましてワインなどを傾けて微笑むどころではないのだ。・・・想うだに頬が引き攣る。
稜線近くなって道は山にぶつかった。その山を切り通しのようにY字形の岐路が抱えていた。どちらも舗装した同じ幅員なのに、標識もなにもない。
さて、どっちにいくべぇか。停車して思案した。
そこへ幸いなことに、独りの老人がヒョコヒョコ上ってきた。すれ違ったいたはずなのに、覚えが無い。突然現れた。朴訥な老人とみた。
「これ(左)へいったらどこへぬけますか?」
「そっちえいったらおめェ、ノブさんとこでおしめェだあ」
「ああん・・?」
ノブさん、ってそれはなに・・だれ・・。
「そっち(右)は?」
「こっちはおめェ行き止まりだあ」
老人は鳩豆の目をして大真面目である。要はどちらへ行っても立ち往生するのだ。
いやはや、みも知らぬノブさんの庭先で立ち往生するわけにもいくまい。
戻り道、往き際には気がつかなかった路傍に、直立した2mほどの茎にまことに見事な花が咲いているのを発見した。
「ほう!」
この時期に、なんとまあ見事な花なんだろう。
いそいそ降りて近寄った。しかも花冠から花弁まで少しも痛んでない。それどころかツヤツヤして光っている。
「ほほう!」なんの花だろう。
それにしても整いすぎている、ような。
花弁に指で触ってみた。
「ん??」
なんと、プラスチックの花だった。
針金で巻きつけて、丁寧にテープで覆ってあった。
「・・・・・・」
この道は昼間から狐狸がでるようだった。
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