【翔ぶ狩人】 
 
 渓谷沿いの車道を走っていたとき、谷底から突如、二羽の大鳥が翔びたち常緑の森を抜けて青空を背景に水平滑空した。
 灰色の狩人、「鳶」である。
 雌雄か、左の鳶は獲物を銜えている。上昇気流に乗って並んでいたが、すぐ左右に分かれて危険性を分散、獲物を銜えたオスらしきは渓谷を上流に向かう。      
 獲物は一見それと識れる、かなり大きな蛇だった。頭部を銜えられ全身をダラリと垂らした蛇はすでに無抵抗の状況をしめしており、鳶の平衡飛行は悠然としたものだった。
 深い緑のなかへ消えていった。

【赤和瀬川沿い】

 赤和瀬川渓谷を包む山稜のコルには残雪の跡はなくなっていた。熊笹が繁り、白樺も爽天に芽吹きを見せて、林道の日陰すら春の彩りに萌えていた。
 熊避けのスズをリンリンならしながら林道を踏んで行くと、フキノトウは野摘みのできる丈をはるかに超えて花茎が伸び散房状の花を愛でる姿ではなくなっていた。
 眼の至るところにはスミレの種類が、わが季節きたりとばかりに咲き誇っている。なかでもショウジョウバカマが今や盛りの勢い。
 ヒノキの枝打ちが進み、間伐された槙類の幹が山際に積まれていて、索莫さを感じる半月の時の過ぎ去りしは、秒針の速さに似て驚くばかり。
 イワナシは筒型花弁が落ちて、一番目標のイワウチワはたった一輪、それもうちしがれて咲いていた。稜線に登って観察すると数株、開花の名残りの芯を見ただけ。群生している多くの茎に花芽を持たないのは幼さなのか。
 小さな渦を巻く、登りつめた沢淵にエンレイソウが大きな3枚葉にひそやかなガクを広げていた。

        【中津河川沿い】
 
 ザゼンソウは若緑の葉を広げて、陽の射さない杉林の中の狭い区域を除き、仏炎苞の一角が萎びた内側で、瞑想する禅僧も老いの色を濃くした態だった。
 岩井滝登山口までの徒歩区間で、トキワイカリソウ、ミヤマカタバミ、キクザキイチゲ、ヤマネコノメソウ、ミヤマキケマン、スミレ各種、コチャルメルソウを再録することができた。
 登山口周辺の杉木立にはまだ残雪を見ることができる。

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