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 津山の郊外から奥津へ走る道路がスカイラインのように整備されました。旧道をがたがた走っていた往時には考えられないほどの、快適な道路です。奥津の観光の目玉である渓谷を彩る桜や紅葉の美しい旧道の上を新道が開通するようになっていて、意図して旧道に入らなければ天然の美を愛でることができなくなりました。
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 奥津ダムは、試験貯水しています。満水で堰堤を越えるたった一度の試験貯水にはまだまだ程遠い状況でした。それでも再び水面にのぞくことのないダム底の有様をみておくのも、報道でしか接することがありませんでしたが、建設の経緯を知る者としては万感の想いが、歴史の証人になるような気がします。
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 奥津は「コブシ祭り」でした。道の駅は車が氾れ幟や屋台がにぎやかに祭りムードを盛り上げていました。
 襟首を桜で化粧したコブシが、若緑の舞台に山を白く浮き彫りに咲いています。
 藤原審爾の「秋津温泉」は「奥津温泉」が舞台です。春日和のベンチでページをめくって小説の世界に耽るのもいいですね。
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上斎原は恩原方向に入り、さらに中津河に向かい、赤和瀬川沿いの林道に分け入ります。取り囲まれた尾根筋や谷筋に残雪があり、根曲がり竹が血管のように地面を這う林道の雪をふみしめて登ります。汚れのない透き通る若緑のフキノトウが、一面に吹きでています。
 やがてイワナシの花が山裾あたりに見え始め、帯状に咲き続いて奥へ奥へと導いていかれ、オオイワカガミの株も見え、イワウチワの自生地にたどりつきます。
 開花にはもう少し時間がかかる状況のなか、中に一輪、淡い高貴なピンク色を刷いた花がありました。高い山奥にも咲く花です。
 お目にかかるのは初めて花でした。感激ものです。
「まだはやえんじゃけど、遠路からこられたんじゃけえ、ちょっとだけみせてあげらあ」
 と、心使いしていただいたようでした。
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 後戻りして中津河川沿いを北東に走ります。
 裏見の滝で有名な「岩井滝」方向です。
 吉井川の源流ともなる渓谷の清流は分水嶺から雪溶け水をだきこみ、岩を噛み泡を吹き旋律を奏でて流れています。
 渓流釣りの人影がチラチラ映り、四駆のワゴンと彼らの拠点になるのでしょうか、窓のない小屋に洗濯物が干してありました。
 「開高健」の世界を思い浮かべました。
 道際にザゼンソウが咲くポイントがあります。
 紫褐色の仏炎包の中で僧呂が深い森林に向かって黙然と禅を組んでいました。いつまでもいつまでも。
 スミレサイシン、コチャルメルソウにも出会うことができて充実した山歩きの1日でした。
 その季節にはツキノワグマとの遭遇にご注意を。

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